裁判員法違反:初めての有罪判決が出た!犯人がした事とは?

2009年に裁判員裁判が始まった頃は、テレビなどでも、裁判員裁判のことがよく取り上げられていました。

しかし、いつの間にか、裁判員裁判のことが取り上げられることも少なくなり、裁判員裁判のことを気にする人は少なくなってきたのではないでしょうか。

しかし、裁判員裁判が始まって約8年ほど経って、初めてとなる裁判員法違反の有罪判決が下されました。

そこで、今回は、その有罪判決を下された犯人は何をしたのか、どのようなことが裁判員法の違反になるのかという点について、詳しくみていきましょう。

Sponsored Link

どんな裁判員法違反をした?

2016年5月10日、福岡地裁小倉支部で、指定暴力団工藤会系組幹部の初公判がありました。そこには、工藤会系の元組員と会社員の2人も傍聴していました。

傍聴するだけなら、特に問題はないのですが、その初公判が終わって閉廷して、みんなが外に出たあと問題が起こりました。

問題といっても、軽く言葉を交わしただけですけど…。

どのようなことかというと、その元組員と会社員は、裁判所近くのバス停付近で、2人の女性裁判員に下記のようなことを言ったらしいのです。

【会社員が言った言葉】
「あんたら裁判員やろ」
「顔は覚えとるけね」
「同級生だからヨロシクね」

【元組員が言った言葉】
「色々言っても変わらんもんね」

言葉だけを見れば、そんなに大したことは言ってないのでは…と言う人がいるかも知れないですね。

でも、これが裁判員に言ったとなると大問題な訳です。

2017年1月6日、福岡地裁は、会社員と元組員が言った言葉は、2人の女性裁判員に不安を生じさせたと判断し、裁判員法違反とみなしました。それで、会社員には懲役1年・執行猶予3年、元組員には懲役9ヶ月・執行猶予3年の刑が下されました。

裁判員法違反罪での有罪判決は、この判決が初めてのことです。

福岡地裁によると、会社員と元組員が、2人の女性裁判員に声を掛けたことによって、その2人は被告人質問で補充質問ができなくなったらしいです。

会社員と元組員は、2人の女性に対して、どのような顔つきで、どのような口調で言ったのかは分からないですけど、2人の女性は相当ビビってしまったのではないでしょうか。

自分が補充質問したことによって、判決に影響してしまうかも知れないと思うと、何も言えなくなって当然ですよね。後々、何らかの報復があるかも知れないなどと、よからぬ想像してしまうでしょうから…。

ただ、裁判で有罪判決が出ましたけど、裁判員の安全を確保するための根本的な解決は出来てないかと思います。

これは、今後の大きな課題でしょうね。

Sponsored Link

裁判員法が定める違反行為

「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」では、第八章に「罰則」が規定されています。

法律ですから、実際の文言はとても難解な書き方がされていますので、簡略化して簡単な文章にすると、概ね下記のような感じになります。

【請託(※)について】
裁判員に請託をした場合、2年以下の懲役または20万円以下の罰金が課せられます。これは、選任予定裁判員に対しても同じ処罰が課せられます。

【情報提供について】
裁判に影響をもたらす目的で、選任予定裁判員に意見を述べたり情報提供をした場合も、2年以下の懲役または20万円以下の罰金が課せられます。

【脅迫について】
裁判員や裁判員の親族に対して、いかなる手段かを問わず脅迫行為をした場合は、2年以下の懲役または20万円以下の罰金が課せられます。

当然、他にもいくつもの規定が明記されていますが、上記の事件に関連する規定は、この3つになるかと…。

(※)請託(せいたく)とは?
ある職務行為を依頼されて、それを行う際、特別な計らい(賄賂など)を受け取ること。

要するに、裁判に関わる判断を操作するような行為は認めないってことですね。当たり前の話ですけど…。

でも、こんな当たり前のことでも、法律で定めておかないと、大切な裁判が台無しになってしまいますから、規定に明記しておくことは大事なことですよね。

実際、上記のような事件が起きてる訳ですし…。

2人の罪が違う理由

上記でも紹介した通り、2人の判決には、下記のような違いがあります。

● 会社員:懲役1年・執行猶予3年
● 元組員:懲役9ヶ月・執行猶予3年

2人の女性裁判員に声を掛けたという点に関しては、行為だけを見れば同じことをしている訳ですけど、話した内容によって判決に違いが出たようです。

裁判では、会社員と元組員に対して、裁判員法違反(威迫・請託)罪が問われていた訳ですけど、会社員は公判で起訴内容を認めていました。

しかし、元組員は威迫や請託の意図はなかったということで容疑を否認していました。

その結果、元組員に関しては、「発言内容がまわりくどく、請託の体をなしていない」などの理由で、会社員より軽い刑が下されました。

要するに、工藤会系組幹部に対して、「有利な判断をして欲しい」という請託行為はなく、威迫行為だけだったとみなされた訳です。

(※)威迫(いはく)とは?
人を怖がらせて、自分に従わせようとすること

本当は、会社員も元組員も、全く同じ目的で2人の女性に声を掛けたんだと思いますけど…。

Sponsored Link