こんにちは!ユウポンです。
以前、大学生の娘が、パソコンで卒論を作成していました。パソコンのモニターを見てみると、あちこちのサイトの情報をコピペしてるだけの感じでした。だから、「ネットの情報を寄せ集めただけの卒論なんて、意味がないぞ」などと話をしていたのですが…。
いずれにしましても、私の娘が書いた卒論程度であれば、公にすることはないので、コピペをしても著作権の侵害を気にする必要はあまりないように思います。でも、世間に公表するような論文の場合、どこまでの範囲であれば、コピペが許されるのか気になってしまいました。
それで、著作物の引用について調べてみました。論文の引用について、どこまでが許される範囲なのか気になっている方は、参考にして頂けると思いますので是非ご覧下さい。
※今回の記事中の情報は、以下の①~⑤の文献を参考にしています。
【参考文献】
①著作権法概説 著:半田正夫(法学書院)
②その論文は著作権侵害? 著:服部誠(中山書店)
③ちょっと待って、そのコピペ! 著:林幸助(実業之日本社)
④もう知らないではすまされない著作権 著:鈴木龍介・富田太郎・山本浩二(中央経済社)
⑤そこが知りたい著作権Q&A100 著:早稲田祐美子(CRIC 著作権情報センター)
承諾なしで引用する条件は?
一般に公開されている著作物は、著作者に著作権が発生しています。これは、登録などせずとも、自動的に発生する権利で「著作権法」によって定められています。
でも、その著作権法によって「引用」も認められているのです。
ただ、自由に引用して良い訳ではありません。著作権法によって認められている「引用」は、下記の6つの条件を満たしている場合だけです。
- ① 公表された著作物であること
- ② 主従の関係であること
- ③ 引用する著作物の出所を明示すること
- ④ 引用する部分を明確に区分すること
- ⑤ 引用する必要性があること
- ⑥ 原則として原文のまま引用すること
ただ、これだけでは分かりにくいですよね。それでは、次の章で、ひとつずつ解説していきますね。
引用する場合の注意点は?
著作権法を読んでみると、細かなことまで規定されてます。しかも、法律ですから文章が難解なので、読んでいて非常に疲れました。だから、法律の文言を、そのまま紹介するのは気が進みません。
ただ、念のために紹介しておいた方が良いと思ったときは、当ブログでは文章を抜粋して紹介するようにしています。という訳で、今回は、著作権法の32条1項だけを抜粋してご紹介しておきますね。
■ 著作権法の32条1項
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない。
読んで見れば分からなくはないのですが、ハッキリと限定していない部分もありますので、理解しにくいですよね。
例えば、「公正な慣行に合致するもの」や「正当な範囲内で行われるもの」などは、曖昧な表現ですから、俗に言うグレーゾーンですよね。
でも、判例を踏まえて考えれば、著作物を論文などで引用する場合、6つのポイントを抑えておけば、著作権侵害で訴えられることはまずないことが分かりました。それぞれ、特に難しいことではないので、ぜひ覚えておいて下さいね。
一般に公開された著作物でなければ、無断で引用してはいけないということです。だから、未発表の著作物(論文など)からの引用は認められない訳で、その場合は許諾が必要ということになります。判例では、三島由紀夫の個人的な手紙は、公表されていない著作物の無断使用になると判断した判決があります。
自分の論文が「主」であって、引用はあくまで「従」でなければなりません。要するに、自分の考えなどを導くことが目的であったり、裏付ける証拠にするために「引用」するのであれば良いということです。そのため、引用が「主」であってはいけないということです。2000年の「中田英寿伝記事件」では、中田英寿氏の詩を利用したのは、引用しなければならなかったのではなくて、詩を紹介すること自体に目的があったと判断され、著作権法上の引用には当たらないとの判決が出ています。
著作権法の48条1項1号では、引用する著作物の出所を表示することが義務付けられています。2002年の「絶対音感事件」では、出所明示を怠ったということで、公正な慣行には合致しないとの判決が下されました。ちなみに、出所の明示は、書籍であれば、「タイトル」「著者」「出版社」ぐらいは最低限明示しておくべきで、必要に応じて、掲載雑誌の版・号・出版年なども適時記載しておくことが必要です。
論文の中で、引用部分を明瞭にする必要があります。ただ、そのルールは明確に決められていないので、かぎ括弧をしたり、斜体や別のフォントにするなどの工夫が必要です。
正当な引用であっても、著作権者の権利を制約することになります。そのため、やみくもに引用して良い訳ではないので、必要のないのに引用することは認められていません。ただ、引用する分量が限定されている訳ではないので、場合によっては全文を引用しても認められる場合があります。例えば、俳句などは、全文を引用せざるを得ないと考えられます。
引用は、原則として、同一性保持権などの著作権者の利益が不当に侵害されないようにすべきです。ただ、原文のまま引用せずに、要約する場合もあるかとは思います。そのよう場合、主観的な評価が入ってしまう可能性がありますので、要約する場合はかなり慎重に行う必要があります。
この6つのポイントを抑えておけば、必要な範囲内で「引用」を用いても、著作者の許諾を得なくても大丈夫です。
ちなみに、「禁引用」「禁転載」という文字が記載されていても、上記の6つのポイントを守っていれば、著作権者の一方的な意志で、それを制限することは出来ないので、合法的に引用することは出来るという訳です。
ただ、著作権者との間で、「引用」や「転載」を行わないとする合意(契約)が交わされている場合は、それが著作権法上の「引用」に当たる行為であっても合意(契約)違反となります。そのため、その辺りは注意が必要ですね。
最後に
論文だけに限らないですけど、何かを書くとき、ちょっとした引用は必要になることが多いですよね。特に、論文や研究報告書などは、著作物を引用して作成する必要性が高いですからね。
著作権法は、著作物を公正に利用することを目的として作られた法律です。そのため、全ての引用が著作者の承諾を得なければならないのであれば、著作権法の目的に反することになってしまいます。
そのため、今回紹介した情報を覚えておけば、無断で引用しても大丈夫ですから、6つのポイントだけはしっかり抑えておいて下さいね。