こんにちは!ユウポンです。
当ブログでは、様々な情報を紹介していますので、著作権を侵害してしまわないように気をつけています。でも、著作権はよく理解しておかないと、気をつけていても、著作権を侵害してしまうことがあります。
例えば、有名な曲であっても、著作権が消滅していれば、ネット上で動画などを紹介するのは自由だと思ってしまいますよね。でも、そんな単純なことではないのです。それは、著作権に関係する権利が他にもあるからです。
その辺りのことを分かりやすく解説させて頂きたいのですが、最初に、日本の著作権がどれぐらいの期間有効なのかを簡単に説明させて頂きますね。それを知っておかないと、肝心な著作権侵害の話が理解できないですから…。
※今回の記事中の情報は、以下の①~⑤の文献を参考にしています。
【参考文献】
①著作権法概説(法学書院)
②その論文は著作権侵害?(中山書店)
③ちょっと待って、そのコピペ!(実業之日本社)
④もう知らないではすまされない著作権(中央経済社)
⑤そこが知りたい著作権Q&A100(CRIC 著作権情報センター)
日本の著作権は何年ぐらい有効なの?
著作権が消滅するまでの期間は、基本的には、それぞれの国の法律によって定められています。ただ、ベルヌ条約(168ヵ国が加入)では、著作者の死後50年が著作権の保護期間と定められていますので、多くの国で著作権が消滅するまでの期間は50年とされています。
その50年という期間ですけど、著作者の孫の代ぐらいまでを目安にして決められたようです。
なお、ベルヌ条約以外に「万国著作権条約(100ヵ国が加入)」という条約もあります。日本は、万国著作権条約にも加盟しているのですが、万国著作権条約の保護期間は、著作者の死後25年と定められています。
ただ、それらの条約に加入していない国々では、独自の基準が定められています。例えば、コロンビアは死後80年ですし、メキシコでは死後100年と定められています。ちなみに、日本はベルヌ条約に基づいて死後50年とされています。
でも、著作権が消滅しているからといって、音楽CDなどを自由にコピーできる訳ではないのです。その辺りのことは、次の章で説明させて頂きますね。
著作権が消滅した曲のCDコピーは違法なの?
日本の場合であれば、著作者が死亡して50年が過ぎれば、その著作物は「みんなのモノ」となります。要するに、人類共有の財産という訳です。ですから、著作権が消滅した曲であれば、誰に許可を得る必要もなくCDにすることも出来ます。
ただ、そこで気をつけなければいけないことがあります。それは、著作権が消滅している曲が入ったCDをコピーすることは、法律で認められていないということです。
どういうことかと言いますと、曲に著作権が無くても、その曲を演奏した歌手やオーケストラには、演奏した権利が発生しますし、レコード原盤を作った人には、原盤を作った権利が発生するということです。その権利を「著作隣接権」といいます。
従いまして、著作権が消滅した曲だけが入っているCDであっても、そのCDをコピーしたいのであれば、その2つの権利者から利用許諾を受けなければいけないのです。
例えば、ベートーベンは1827年3月に亡くなっています。そのため、ベートーベンの著作権は、とっくに消滅しています。だから、ベートーベンの曲を演奏してCDにするのは自由です。でも、そのCDを他者が勝手にコピーすることは出来ないということです。
- 著作権が消滅した曲 ← 自由に使って良い
- 著作権が消滅した曲が入ったCD ← 著作隣接権者の許可が必要
ところで、国によって、著作権の保護期間は違う訳ですけど、それぞれの国同士で、どのようにして折り合いをつけているのか分かりますか?その辺りのことは、次の章で説明させて頂きますね。
著作権の保護期間が違う国の著作物は、どう扱うの?
国によって、著作権の保護期間は違いますから、何らかの取り決めがなければ整合性が取れなくなってしまいますよね。
そのため、条例では、相手国では保護期間内にある著作物であっても、自国での保護期間が過ぎていれば、それは自国で自由に利用できることになっています。例えば、ドイツ(死後70年)では保護期間内のモノであっても、日本(死後50年)では保護期間が過ぎていれば、それは日本では自由に使えるということです。
逆に、相手国が自国より保護期間が短い場合は、相手国が定めている保護期間だけ保護すれば良いということになっています。例えば、日本では死後50年は著作権が発生しますけど、イランでは死後30年が保護期間です。そのため、イランの著作権者が死亡して30年以上経っていれば、日本では自由に使うことが出来るということです。
ただし、例外もありますので、世界的に有名な「星の王子様」を例にして、次の章で説明させて頂きますね。
著作権の期間が延長される場合もあるの?
「星の王子さま」の著者であるサン・テグジュペリ(フランス人)は、1944年に飛行機での偵察中に撃墜されて死亡しました。そのため、日本では1994年になれば「星の王子さま」を自由に使うことが出来たはずです。
でも、第二次世界大戦後に、日本が連合国と締結したサンフランシスコ条約では、連合国(アメリカやフランスなど)の国民の著作権は、戦時中の期間を加算して延長することが盛り込まれていました。そのため、「星の王子さま」は、1994年ではなく2005年になって自由に使うことが出来るようになりました。
ちなみに、フランスの著作権の保護期間は、死後70年です。しかも、国のために殉職(戦死)した著作者には、さらに30年がプラスして保護される制度があります。そのため、フランス国内では、「星の王子さま」は2044年(1944年+70年+30年)まで著作権が発生するということになる訳です。
日本では、「星の王子さま」は自由に使えるようになっていますから、フランスの人達が日本の状況を知ると、ビックリするでしょうね。
ちなみに、サンフランシスコ条約で、著作権が延長されたのは日本だけです。第二次世界大戦で、日本と同じように敗戦国となったドイツやイタリアには、そのような義務は負わされていません。これは、理不尽な話ですよね。
だから、当然、日本は是正してもらうために活動していました。その辺りのことは、次の章で簡単に説明させて頂きますね。
ドイツやイタリアのようにはならないの?
上記で説明した通り、サンフランシスコ条約では、日本だけが著作権の期間延長が義務付けられました。日本人としては、これは納得し難いですよね。同じ敗戦国のドイツやイタリアも、日本と同じ扱いであれば納得できなくもないとは思いますけど…。
それで、2007年に「CISAC(著作権協会国際連合)」の総会が開かれたとき、日本の要望として「ASRAC」の徳倉俊一理事が是正を訴えました。すると、何と承認してもらえたのです。
でも、条件が付けられました。
それは、日本の著作権の保護期間を延長することです。アメリカや欧州加盟国の著作権の保護期間は、著作者の死後70年ですから、それに合わせないといけないということなのでしょうね。それが前提条件として承認してもらえたのですが、日本は著作者の死後50年という基準を変えていないので、現在も条件をクリアできないままです。
最後に
いかかでしたでしょうか。著作権だけを気にしていては、著作隣接権を見逃してしまって、著作権を侵害してしまうことがあるということです。
法律は難しいですけど、何かあったとき「知らなかった」では済まされません。そのため、最低限の知識は持っておかないと、後々大変なことになる可能性もありますので、気をつけないといけないですね。